東京朝日新聞 大正三年十二月二十九日
     編集者注: 記事には旧漢字が使用されておりますが、すべて新漢字で入力いたしました。
           (例:「佛ヘ青年會」→「仏教青年会」)
 
●クーロー中佐謝状
 大日本仏教青年会にては先に浅草本願寺内に収容せる三百余名の独■俘虜慰問の為めクーロー中佐宛て一篇の慰問状を贈呈せし事は既掲の如くなるが右に対し昨日中佐より独文にて左の懇篤なる謝状到達したり
謹啓十一月二十六日付芳翰昨夜領掌此の上もなき御親切なる御言葉に対し不取敢小生及び部下の真摯深厚■る謝意を表し候尊翰中に記されたる思想■高■とは小生及び戦友の大なる慰藉と相成申候小生等も自ら「身命を賭せる忠実の義務遂行」と申す独逸最高の道徳を履行せしに就いては心私かに満足致し居候へとも之に対する吾人の知己を敵国に発見せし事は一種の格別の喜びに候
小生が過去の仏教研究は固より浅■に候へとも是によりて仏教とキリスト教との間に存する多くの共通点の外に尚ほ「神と国家によりて命ぜら■たる義務を完うすべし」と申す根本原則も亦共通なる事を領知致居候小生は貴翰訳文を我が将校、下士■に示し候処彼等は予期せざりし同情発表の貴下等の行為に対し感涙を浮■て満足を表せし事を確■致候
小生は曽て独逸に留学せられたる知名の日本人と已に二十年以上も親交を■居候事故日■両国民の親交速に旧に復し再び従来の光輝を■てよとの御希望には殊に同感に候小生は此等の知己より貴国国民の善良なる特性の尊重すべき事を学び候然れども如何にして■■る友誼を結び■べきか又如何にして結ぶべきものなるかと申す事は一介の武■たる小生には単に不明と申す外なく候小生及び戦友の心に深く感銘せられ候貴下等の宏量なる御言葉に対し再び鄭重なる謝意を表し候
      東京浅草本願寺内 中佐クーロー拝
   大日本仏教青年会代表者
大森禅戒殿、柴山一能殿、白山謙致殿