神戸大学交響楽団による「忠臣蔵」再現演奏会

 

去る1014日、神戸大学にて再現演奏会「時空を渡る楽の音」を聴きました。会場は1935年に建てられた由緒ある六甲台講堂で、あいにくの雨にもかかわらず、かなりの入場者数でした。これは東日本大震災のためのチャリティーコンサートでもありました。神戸大の交響楽団は、すでに2005年より青野ヶ原収容所のコンサートを再現する演奏会をおこなっており、2008年にはウィーンで里帰り公演もしています。また2009年には東京で習志野の演奏グループとの合同演奏会もおこなっています(今回、小野市での16日のコンサートも同様)。曲目は以下の通りで、公演のはじめに青野ヶ原収容所のことなど一般的な解説を大津留厚先生が、また楽曲に関する解説を曲ごとに長野順子先生が担当されました。

 

ベートーヴェン:「エグモント」序曲

ヴュータン:「レヴリ」

ボワルデュー:オペラ「バクダッドの太守」序曲

ラムゼーガー:交響詩「忠臣蔵」序曲

 

三曲目までは、青野ヶ原収容所でおこなわれたコンサート・プログラムからの抜粋です。私には「エグモント」序曲以外ははじめて聴く曲でしたが、心地よく聴くことができました。ヴュータンの「レヴリ」は、本来ヴァイオリンの独創曲のようですが、指揮に当たられた作曲家でもある田村文生先生によるオーケストラ編曲版が演奏され、これは記念すべき初演とのことでした。

交響詩「忠臣蔵」は、板東収容所にいた捕虜ファン・デア・ラーンのおじで、神戸在住の優れたアマチュア音楽家であったラムゼーガーの作曲になるもので、板東でエンゲル・オーケストラによって19171021日(94年前の本日!)に演奏されています(このときも、順番は逆ですが「エグモント」序曲が演奏されました)。これまでこの曲の再現は、1987年に徳島交響楽団によっておこなわれていて、私はヴィデオでその演奏記録を視聴したことがあります。このときは、全曲演奏するには冗長であるとの判断から、幾分短縮されたものが演奏されたようです。今回は短縮版ではありませんでした。先の再現に比べると、幾分じっくりした遅めの演奏であるように感じましたが、熱意のこもった演奏であったせいかそんなに長いとは感じませんでした。日本文化にも関心を持っていたラムゼーガーの「忠臣蔵」は、全8曲の構成であり、多くの部分は骨組しか残されていないようですが、神戸大学の方々による今後の全曲オーケストラ編曲・再現演奏の可能性が期待されるところです。

なお、小野市立好古館での展示会は10月末までおこなわれています。青野ヶ原収容所関連の展示品のほか、今回は、捕虜たちの姿が入っている当時の風景写真と、その背景の風景が現在どうなっているかという興味深い比較写真展も行われているようです。