47. 三木成夫先生のおもいで
 
伊藤 恵夫
 
 昭和五十九年、芸大の美術解剖学研究室の前助手でいらした白石晃子さんに連れられて、三木先生のいらっしゃる東京芸術大学保健センターにおじゃましたのが、私にとって三木先生との最初の出会いでした。当時、国立科学博物館の古脊椎動物研究室で技術補佐員をしていた私は、脊椎動物の系統発生と骨に非常な興味があり、『古生物学各論W』に脊椎動物の個体発生と系統発生に関する魅力あふれる文章をお書きになっていた三木先生にどうしても直接お会いしたかったので、無理をお願いしたのでした。この時から、私が聴講生をへて美術解剖学の修士に入学し1年の夏を迎えるまで、三木先生には様々なことを教えていただきました。動物の骨に関するゲーテの研究や、脊椎動物の系統発生を明解に示したグレゴリーの図など、私の興味があった分野について、ひょうひょうと、しかし熱っぽくお話してくださいました。また、生物の講義の時にお話になったシーラカンスを解剖したときの感動の御様子も忘れられません。三木先生がなさったのは、一号標本と呼ばれる日本で最初のシーラカンスの解剖でしたが、平成元年三月に行われた六体目のシーラカンスの解剖に、私が立ち会わさせていただいた時、「ここに三木先生がいらっしゃたら・・・」と、思わずにはいられませんでした。心よりご冥福をお祈りいたします。
 
(東京芸術大学美術解剖学研究室非常勤助手)