鈍色の季節
耳たぶ色した春の朝
生後三ヶ月の赤子の手がふるえていた
錆びついた都会の空に
きたない女が横たわる
蝉の死骸で窒息しそうな夏の午後
オレンジ色したヒッピーがバンジョー鳴らした
火葬場の饐えた臭いに誘われた牧師の心は
癩病患者と踊る日を夢見ている
燃える油絵のような秋の夕
蝦蟇を孕んだイスラム教徒が断末魔の悲鳴をあげた
モスクの歪んだ中庭では唖のアベックが
腐ったキスを交わし合う
かじかんだ手足のぶら下がる冬の夜
もの悲しい顔したレストラン店主が
どんより黒ずんだ実験用鼠の小さな一滴(ひとしずく)を
飢えた老人の十二指腸に流し込んだ
自殺者たちのペニスから滴り落ちる透明な精液は
産婦人科に喘ぐどろどろの花弁に
今も激しく怯えわなないている
それぞれの季節のそれぞ
れのうつろいは鈍色にぽ
たりと光る小さなフィ
ラメントの嘆きで
その終焉を知らせ
る鐘の音は奈落の淵
でひっそりと
ワライツ
ヅケル