俘虜 パウル・クーロ (Paul Kuhlo) の手紙
 
1918年12月8日 習志野
 
閣下 殿
 あなたのご親切に感謝申しあげます。以前のあなたの部下である田中中尉は、あなたから頂いたお葉書のご親切なお言葉を翻訳してくれました。その葉書を読んで私は大変嬉しく思っております。閣下が私達の運命に同情をよせて頂いていることがわかります。私達は慰められています。私も友人達もこれまでの栄誉が失われていることを閣下はよくご認識下さっています。将来も忍耐強く運任せで暮らしていかなくてはなりません。
 ところで私の個人的なことをいえば、体調はよく元気です。私たちの収容所には幸いスペイン系の俘虜はいないので、これからも彼等と関わりがないようにしたいと思っています。
 私はここ最近閣下宛に2,3通のお手紙を出しておりますが、そちらへ届いているのかどうかわかりません。
 ここの新しい医師は最初から頼りになる人ですが、彼は閣下の挨拶の言葉を私の友人に届けてくれました。
 いよいよ来年は遂に待望する帰国となりますが、それは決して嬉しいことばかりではありません。親戚や友人達は祖国のために死を免れなかったので、帰国の喜びは小さいものです。
 閣下宛に今1919年の新年のご挨拶を送らせて頂きます。私の俘虜生活の間ご親切に接して頂いたことは、決して忘れません。閣下に対する心からの敬意をもって。
 パウル・クーロより